TOPうんちく今、土木が熱い!土木見学土木見学リストねじりまんぽ>No35-千代ヶ崎砲台跡

ALPHA-SPACE55
千代ヶ崎砲台跡

撮影/令和7年7月5日撮影

▼前へ(No34-皇后崎橋梁ねじりまんぽ・本文/次へ(No1-旧碓氷第12橋梁)▲

ねじりマンポ もくじ
1.「ねじりまんぽ」とは
2.「ねじりまんぽ」を見に行こう
3.「ねじりまんぽ」の構造
4.「ねじりまんぽ」建設再現
5.番外偏
6.マスコミで紹介されました
7.「ねじりまんぽ」一覧表
参考文献、リンク
下のボタンを押すとご覧のページを
facebookシェアーすることが出来ます

下記は広告です(広告ページへ移動します)



千代ヶ崎砲台跡見学会

■東京湾要塞は、

明治から昭和前期に首都東京を守る目的で建設された

32カ所の砲台群で構成されています。

そのうち、猿島砲台跡と千代ヶ崎砲台跡の2つの砲台が

「史跡東京湾要塞跡」という、

軍事遺跡としては日本で初めての国史跡に指定されています。

現在、史跡を将来に継承していくための保存と活用を図る整備が行なわれています。

■塁道のカーブ部分には、

「ねじりまんぽ」斜架拱(しゃかきょう)が見られます。

明治10年代に建設された猿島砲台跡で見られない工法です。

また、当時の砲台施設の天井は煉瓦造でしたが、

明治20年代中ごろに起工した

  千代ヶ崎砲台

では、コンクリート造になっています。

またその管理も、陸軍、自衛隊、横須賀市と移り、

近代土木技術の発展過程をも見ることができる、貴重な遺産です。

■「千代ヶ崎砲台跡」の見学会は

原則年末年始を除く土曜日、日曜日、祝日に

無料で開催されており、

サポーターの会の方が案内されます。

ここには関東には珍しい「ねじりまんぽ」が3基現存します。

おまけに長手積みではなくオランダ積みの「ねじりまんぽ」も有り、

探究心がくすぐられます。


■現地に着くと、サポーターの会の方に親切に迎えていただき、

休憩所の中に案内されました。

冷房も効いており、トイレ(バイオトイレ)も有ります。

■予定時間になると、サポーターの会の方一名が案内してくれます。

朝一番だったのでゲストは我々夫婦の他に

中年男女のペアと若い男性の合計5名だけでした。

でも、2回目の見学会では10名近くおられたように思います。


柵門/砲台の入り口 28センチ榴弾砲/休憩所
休憩所に掲示の全体写真/休憩所展示資料/令和二年
榴弾砲の模型 レンガ

砲弾の通り路/地下施設


■千代ヶ崎砲台跡にはいくつもの部屋が有り、

覗くだけかと思っていたら、幾つかの部屋に入ることができました。

写真撮影もOKで、詳細に説明して戴けます。

○露天空間を設けて光りを取り入れ

緩くカーブした、レンガと石を積み上げた「塁道」のデザイン。

○コンクリートは高価だった頃とはいえ、

通路等の出入り口はレンガにしている。

これらのことを鑑みると、

機能だけを追求した軍事施設では無く、

景観にも配慮した施設であることを感じました。


休憩所を出て販路を下ります 緩くカーブした、レンガと石を積み上げた「塁道」
ねじりまんぽ-A/第三弾薬庫に至る「交通路」入り口
第二貯水所北の配水施設/沈殿池(手前)と濾過池(奥) 井戸/第二貯水所
アーチ状の奥の壁/第二貯水所 自衛隊が使ってた頃の名残/第二貯水所
第二砲座西の露天空間
左は普通レンガ、右の黒っぽいのが「焼きすぎレンガ」 金属盗掘により金具があった所が破壊/第二掩蔽部
四角い肌色の部分は、上部が空気穴/第二掩蔽部 第二掩蔽部
ねじりまんぽ-B/第一貯水所
ねじりまんぽ-C/塁道南端
交通路/第一弾薬庫 第一弾薬庫
砲弾輸送用の天井穴(上)と床穴(下)/第一弾薬庫 肩幅ほどの点燈室、左に小窓が開いている/第一弾薬庫
第一弾薬庫 点炉室からの灯り/第一弾薬庫
第一弾薬庫


砲弾の行き先

■レンガの中には桜の刻印が押したものがあります。

小菅集治監という刑務所に併設された煉瓦工場で作られたものだということです。

■南端の終点、「右翼観測所」への連絡通路前まで来ると

その先は民地のようで、引き返して砲座へ進みます。

第一弾薬庫に繋がる幅1mほどの「交通路」を進み

暗くて濡れた階段を上ると、明るく開けた場所に出ます。

第二砲座です。

続いて第一砲座も見学します。


第一砲座
砲弾が上がってくる穴 当時の様子
第一砲座 伝声管/第一砲座
第一砲座 かすかに見える土塁の上に登る階段/第一砲座
石組み基礎/第一砲座 下水用の穴/第一砲座
第一砲座
第二砲座


土塁へ登る

■砲座を見学の後は元来た塁道を戻り、

販路から土塁の上に出ます。

東側には大砲が睨んでいた「浦賀水道」が見えます。

西側には天気がよければ富士山が見えるビューポイントもありますが、

残念ながら曇り空でした。


第三砲座/許可を得て、転落防止柵近くから撮影
空気穴と屋根 掘削され露出した空気穴/後方は浦賀水道
第−砲座 第二砲座

ねじりまんぽ諸元の整理

データシート

■見学会だったため、計測時間が無かったのと、

レーザー距離計やコンベックスを持っていかなかったので、

長さの計測は出来ませんでした。

■砲台跡なので、文献「鉄道と煉瓦」に記載はなく、

現存する”ねじりまんぽ”としては唯一の軍事施設です。

ねじりまんぽが3カ所(A〜C)有りますが、

入り口付近だけがねじりまんぼで、

奥の天井はコンクリート作りになっています。

斜架角(しゃかかく)θはAが80°、Bが70°と推定され(Cは不明)ます。

起拱角(きょうかく)βは非常に小さく(≒10°)、

「No25-安井橋梁/撤去」θ=83°、起拱角 β≒5〜10°(文献2))

「No.11-市三宅田川橋梁」θ=78°、起拱角 β≒8°(実測)

と並ぶ、「ねじり」の小ささです。

これらのことから構造的な必要性と言うより

意匠的な意味が大きかったのかと考えられます。

レンガの積み方はオランダ積みです。


■ここからは、文献と観測データを元に諸元を整理していきます。

文献及び実測値より、諸元を下記のとおりとしました。

同時に、千代ヶ崎砲台跡のねじりまんぽの特徴をまとめました。

ねじりまんぽ-A/第三弾薬庫交通路

■ねじりまんぽ-A/第三弾薬庫交通路

1.端面は小口の面一で4巻。断面は欠円です。

2.ねじり部分の奥行きはレンガ約2個半〜2個+羊羹のみ。

3.斜架角 θ≒80°、起拱角 β≒10°と「ねじり」にする意味が小さい。
  「No25-安井橋梁」「No.11-市三宅田川橋梁」と並ぶ、「ねじり」の小さなマンボです。

4.入り口付近だけがねじりまんぼで、奥の天井はコンクリート作りになっています。
  他には例がありません。

5.側壁、翼壁はレンガでオランダ積みとなっています。

6.アーチ部分は長手積みとなっています。

ねじりまんぽ-A
図−β 実測値と理論値の比較
(クリックで拡大図)    
正径間  W= 未測定
斜径間  a= 未測定
巾員  L= 未測定
斜架角  θ= 右80度 (平面図より測定)
起拱角  β= 10°(実測値)

 6°(θから求める理論値)

ねじりまんぽ-B/第一貯水所

■ねじりまんぽ-B/第一貯水所

1.端面は面一だが、2巻で、内側は長手と小口との組み合わせ。
  外側は長手のみの計2巻と他に例が無い。

2.ねじり部分の奥行きは、
  小口4ヶ+七三(あるいは、長手2個+小口一個+小口の七三)〜長手3個ぶん。

3.斜架角 θ≒70°、起拱角 β≒10°と小さい方です。

4.ここも入り口付近だけがねじりまんぼで、奥の天井はコンクリート作りになっています。

5.側壁、翼壁はレンガでオランダ積みとなっています。

6.アーチ部分はオランダ積みとなっています。一般的には長手積みですので非常に珍しい構造です。
  このため端面が内側は長手と小口との組み合わせ、外側は長手のみの計2巻になります。
  内部はどうなっているんでしょう?覗いてみたくなりますね。

ねじりまんぽ-B
図−β 実測値と理論値の比較
(クリックで拡大図)    
正径間  W= 未測定
斜径間  a= 未測定
巾員  L= 未測定
斜架角  θ= 左70度 (平面図より測定)
起拱角  β= 10°(実測値)

13°(θから求める理論値)
←左の写真/違う場所の端面写真です。
 端面は面一。 写真は3巻写っていますが、
 ねじりまんぽ-Bでは2巻で、
 内側は長手と小口との組み合わせ。
 外側は長手のみの計2巻と他に例が無い。

ねじりまんぽC/右翼観測所方向出入り口

■ねじりまんぽ-C/右翼観測所方向出入り口

1.端面は敷地外のため今回は確認出来ませんでしたが、
  インターネット上の写真から判断すると、
  5巻構造で、内側はオランダ積みの影響で長手と小口との組み合わせ。
  中間は長手のみが3巻。一番外側は小口で1巻となっています。
  
2.ねじり部分の奥行きはレンガ約2個半程度。

3.斜架角 θ≒不明、起拱角 β≒25°
  起拱角から斜架角を理論値で逆算すると53°となります。

4.他のA、Bと同じく入り口付近だけがねじりまんぼで、奥の天井はコンクリート作りになっています。

5.側壁、翼壁はレンガでオランダ済みとなっています。

6.ねじりまんぽ-Bと同じく、アーチ部分はオランダ積みとなっています。

ねじりまんぽ-C
正径間  W= 未測定
斜径間  a= 未測定
巾員  L= 未測定
斜架角  θ= 右/角度不明
起拱角  β= 25°(実測値)


■なお上記「調査ーデータ」を作成するにあたっては、下記の考えに従いました。(他のまんぽと共通事項)

●ねじりまんぽの番号
 /「鉄道と煉瓦」表4-1”一覧表”(P117)における番号から不掲載分を追加。

●方向
 /東西南北の表示は主たる方向とした。

●経度緯度
 / Googleマップ より求めた。

●煉瓦形状(今回はデータ無し)
 /手作り煉瓦であるので寸法にバラツキがある。故に代表値。

●積み方/イギリス積み、オランダ積みの区分
 /コーナーの仕上げ形状により、イギリス積みとオランダ積みが区分されるので、
 /文献「鉄道と煉瓦」にならい、一般的に”イギリス積み”と表記。
 /今回の場合、公式論文が”オランダ積み”となっていたので、”オランダ積み”と表記しました。

●θβの左右区分
 /「鉄道と煉瓦」にならい、側壁に向かってアーチの煉瓦が右上がりの場合「右」 、左上がりの場合「左」 と表記。

●中心キロ程/現行距離程による。(開業時とは異なる)


位置図


INFORMATION

■関連リンク(外部リンク/新しいページが開きます)

千代ヶ崎砲台跡見学会(横須賀市)

千代ヶ崎砲台跡 活用サポーターの会)

千代ヶ崎砲台跡不思議なねじりまんぼ/活用サポーターの会

参考ブログ/by うさお さん

煉瓦研究ネットワーク関東


1.「ねじりまんぽ」とは
2.「ねじりまんぽ」を見に行こう
3.「ねじりまんぽ」の構造
4.「ねじりまんぽ」建設再現
5.番外偏
6.マスコミで紹介されました
7.「ねじりまんぽ」一覧表
8.参考文献/参考外部リンク
『アナと雪の女王』/四季劇場・春

参考文献

1) 斜架拱(しゃかきょう)/伊藤鏗太郎(イトウ コウタロウ)編訳/1899年(明治32年)

 我が国で初めて斜架拱”ねじりまんぽ”を単独で取り上げた書物と思われます。
 この論文はダウンロード(外部リンク/新しいページが開きます)可能です。

■たけちゃんが現代語訳しました。
あくまで原書を読みやすくするという意図をもって作成したものです。
たけちゃんのブログ「Day by day」からダウンロードすることが出来ます。
「Day by day/「斜架拱」現代語訳」(外部リンク)
   
2) 鉄道と煉瓦−その歴史とデザイン

/著者;小野田 滋(おのだしげる)/鹿島出版会/2004発行

 煉瓦の歴史や組積方法鉄道構造物としてのデザイン等について記されています。
 全国45都道府県を調査した”足で書かれた論文”で、現在も購入可能です。


3) 阪神間 ・京阪間鉄道における煉瓦 ・石積み構造物とその特徴

/著者;小野田 滋/土木史研究 第20号/2000.5

 京阪神間の煉瓦 ・石積み構造物の特徴を捉え、現地調査結果をまとめています。(PDF/外部リンク

4) 組積造による斜めアーチ構造物の分布とその技法に関する研究
/著者;小野田 滋、河村清治、須貝清行、神野嘉希/土木史研究 第16号/1996.6

 「ねじりまんぽ」の分布や技法についてまとめた論文です。(PDF/外部リンク

5) 関西地方の鉄道における「斜架拱」の分布とその技法に関する研究」

/JR西日本 河村清治、小野田滋、木村哲夫、菊池保孝/土木史研究 第10号/1990.6

 JR西日本管内の「ねじりまんぽ」を本格的に調査し、まとめています。(PDF/外部リンク


TOPうんちく今、土木が熱い!土木見学土木見学リストねじりまんぼ>No34-皇后崎(こうがさき)橋梁

▼前へ(No26-東皿池橋梁)/ねじりまんぽ・本文/次へ(No30-旧折尾高架橋)▲

下のボタンを押すとご覧のページを
facebookシェアーすることが出来ます



ホ−ムペ−ジへ戻る